顔面のしわ、たるみが発生する原因は、主に①皮膚自体の老化、乾燥 ②日常繰り返される表情筋の収縮(表情じわ)③重力の影響の3つがあります。

加齢に伴う自然老化と、紫外線による光老化などの原因が考えられます。

顔の表情を作る表情筋が、収縮・伸縮を繰り返すことで生まれるたるみやシワです。

地球の重力の影響を受け続けることで、筋肉が落ち皮膚が伸びてしまうことで起きるたるみです。

これらのうち、主に③の原因による軟部組織(皮膚・脂肪・筋肉など)の垂れ下がりを直接改善するのが、フェイスリフト手術です。 (①、②は外科的手段よりも、各種注入療法やボトックス注射などの非手術療法が第一選択となります。) 

図1aの顔半分は、典型的な老化の状態を示しています。顔面の所々には皮膚や皮下脂肪と、より深い組織(骨格)を繋ぐ硬いヒモのようなもの(保持靱帯)があり、それぞれに名前が付けられています(図2)。

たとえば頬骨部靱帯(zygomatic ligament)が緩むと頬の脂肪体(顔の中央寄りに存在する比較的大きな皮下脂肪のかたまり)が下垂し、法令線に寄りかかるようにして膨らみを作り、その結果法令線(鼻唇溝)が深くなって目立つようになるのです(図1a)。
また咬筋部靱帯(massetelic ligament)が緩むとあごの上を広く被っている脂肪があごの下にまで垂れ下がるようになり、これをjowl変形と呼びます。
顔面全体でみれば凹凸が目立つようになり、また下垂した脂肪の辺縁部に一致して特徴的な深い溝が形成され、それらにもそれぞれ名前が付けられています(図1a)。

また、首からあごにかけて広がっている広頚筋が緩んでくることによってあごの下の皮膚が垂れ下がり、くびれが浅くなります。 あご下に脂肪が多量に沈着している場合にはさらにたるみがひどくなって「七面鳥様の首」(turkey gobbler neck)と言われる状態になることもあります(図1b)。

地球の重力の影響を受け続けることで、筋肉が落ち皮膚が伸びてしまうことで起きるたるみです。

顔のたるみに対する世界で初めての手術は、1900年初め頃秘密裏に行われたとされ、垂れ下がった皮膚を切り取るだけの限定的なものだったようです。 1970年代にフランスの外科医が、顔面には多数の表情筋がひと続きになった筋膜構造が存在することを発見し、この筋膜をSMAS (Superficial Musculo Aponeurotic Systemの略)と命名しました(図3)。

また同じ頃スウェーデンの外科医が、顔面のたるみ改善には広頚筋を引き上げるのが最も効果的であることを報告しました。広頚筋(Platysma)はSMASと一体であることから、以来SMAS-Platysma法がフェイスリフトの基本術式として世界的に普及し、現在までその概念が引き継がれています。

しかし古典的なSMAS-Platysma法(いわゆるSMAS弁法とほぼ同じ)は、あごから首にかけてのたるみを解消し、下顔面の輪郭を整える効果は大 きいものの、特に中顔面のたるみ改善度と持続性に乏しく、これを解決するために様々な術式や工夫が報告されてきました。

フェイスリフトにおける最近の進歩は、大まかには二極化していると言えます。すなわち一方は拡大手術路線、もう一方は逆に縮小手術の方向です。

一度の手術で最大限の効果を出すことを考えれば、皮膚やSMASの剥離範囲を拡大したり、より深い層にアプローチすることによって、効果や持続 性をより高めることができます。また先に述べた靱帯(retaining ligament)の切離や処理も、効果を高めるために重要な手段として、近年盛んに提唱 されています。

ただ拡大路線では、術中・術後のリスクやダウンタイムが増えることにもなりますので、誰にでも簡単に受け入れられるものではありません。

そのため効果の大きさよりも、負担やリスクの少なさを求める、あるいは他人には気付かれにくい何気ない変化を望む患者様に応えるため、手術の範囲を限定したいわゆるミニリフトという方法も存在しています。

またダウンタイムをほとんど必要としない簡便な手術として、スレッドリフト(特殊な糸を使った引き上げ法)がここ数年急速に普及しています。

それぞれの患者様のご希望やスケジュールに対応できるよう、当院では複数のメニューを用意しています。患者様の負担が小さい順に並べると、以下のようになります。

最大の効果を期待する場合、術後回復のための時間(ダウンタイム)にある程度の余裕があれば、これまでの経験で得られたノウハウを凝縮したオリジナルトータルリフトを最もおすすめします。
なお、スレッドリフトについては別項で解説しています。



→シルエットリフトの詳細はこちら

1: スタンダードSMAS弁法
2: 側頭(こめかみ)リフト
3: ミニリフト
4: オリジナルトータルリフト

まず、基本的なSMAS弁の牽引による下顔面のリフト(SMAS-Platysma法と同義)について述べます。

① 皮膚切開(図4a)
耳の付け根に沿って皮膚を切開します。 傷がなるべく見えにくいよう、例えば耳珠と呼ばれる軟骨の膨らみの部分ではその縁に沿って切開を入れます。そのまま耳たぶの付け根を通って後ろへ回り、耳の付け根の溝に沿って上方に向かいます。 たるみを引き上げた結果余剰となった皮膚は切除するのですが、余剰皮膚が多い場合にはそれをきれいに処理するために、耳後部の切開線を毛髪の生え際まで延長します。


② 皮下剥離(図4b)
皮膚の下(SMASの上)を剥離します。 その範囲は、耳前部では顔の中心に向かって5〜6cm、耳下部では首の方へ3〜4cm、耳後部は毛髪の生え際までです。

③ SMASの切開・剥離・引き上げ(図4b, c, d)
耳のすぐ前でSMASを図4bのように切開し、そこからSMAS下を前方に剥離します。 剥離したSMASを後上方に引き上げ、余剰となったSMASを切除して縫合しますが(図4c)、通常その一部を弁状に残し、耳後部に引き込んで縫合固定します(図4d)。SMASはあごから首にかけて広頚筋につながっていますので、SMASの吊り上げによって特にあご下のたるみが劇的に改善します。

④ 皮膚切除・縫合(図4e)
SMASの引き上げによって、皮膚はそれ自体を引っ張らなくても耳の周囲でだぶついた状態になっています。 この余剰皮膚を、元の切開線の形に合うように切り取り、切り口を縫合します。手術の仕上がりにとって、傷がきれいで目立たないことも重要なポイントですので、皮膚縫合においても手間を惜しみません。実際には真皮(皮膚の裏側どおし)と表の二重の縫合を行うので、やや時間がかかります。

これを単独で行う場合もありますが、いわゆるトータルリフトでは下顔面のリフト(チークリフト)と組み合わせて一緒に行います。

顔面に数多く存在する表情筋は、すべて顔面神経によって動いています。もし顔面神経が麻痺すると、まぶたや眉毛、口の動きが悪くなり、表情に乏しくなってたるみも起こります。 顔面神経はSMASの下で顔全体に広がっていますが、下顔面の特に側面では比較的深いところ(耳下腺の中)を通っており、SMASの下を剥離しても問題はありません。

しかし頬骨の側面(頬骨弓部)では神経がかなり浅いところを走行し、SMASの中を通っているので、その付近ではSMAS下を剥離することができません(図5a)。
側頭部でSMAS(側頭頭頂筋膜)を引っ張ることはできるのですが、頬骨に付着しているSMASを剥離できないために、あまり動かないのです。

ところが、皮膚は強く引っ張るほどよく伸びてしまい、引き上げ効果は長持ちしません。また皮膚を縫合した傷あとが伸ばされて広がり、いわゆる「はげ」ができてしまう恐れがあるのです。

皮膚切開は前述のように、側頭部毛髪内にW型におきます(図5b)。
そこから前方へ生え際に向かって皮下(側頭頭頂筋膜すなわちSMASの上)を剥離します。




生え際に達したら、筋膜上に加えて皮下脂肪の浅い層でも剥離し、生え際に沿った幅5mm〜7mm程度の皮下脂肪弁を作製します。 この皮下脂肪弁に糸をかけて後上方に引き上げ、側頭筋膜(側頭頭頂筋膜の下にあり、しっかりとした硬い筋膜)に縫合固定します(図5c)。 これにより、毛髪部の皮膚を引っ張らなくてもリフト効果が得られます。切開部で皮膚がだぶつきますが、あまり切除しないで後方の皮膚とともに後ろにずらし、縫合します。

スタンダードSMAS弁法に比較すると拡大手術にはなりますが、リスクやダウンタイムはそれほど変わらず、少しでも効果を高める工夫を盛りこんだ独自の術式で、最もおすすめの方法です。

その内容を要約すると、ラテラルスマセクトミー + 脂肪吸引(口角部・顎下部)+ 皮下脂肪弁による側頭リフト + シルエットリフトによる頬脂肪体の吊り上げです。

① 皮膚切開(図6a)
耳周囲の皮膚切開はスタンダードSMAS弁法とほぼ同じで、これに側頭リフトの毛髪内W型切開を組み合わせた(連続させた)ものになります。

② 皮下剥離(図6a)
皮下剥離の範囲は、耳前部では顔の中心に向かって7〜8cm、耳下部では首の方へ4〜5cm、耳後部は毛髪の生え際まで、側頭部は生え際から1cm前方までです。したがってスタンダードSMAS弁法に比べると、皮下剥離範囲はやや広くなります。皮下剥離を進めながら、支持靱帯(retaining ligament)のうち、頬骨部靱帯(zygomatic ligament)と咬筋部靱帯(massetelic ligament)を切離します。

③ SMASの切開・剥離・引き上げ(図6a, b)
前述のように、従来型のSMAS弁法でもあごからあご下にかけてのたるみ改善効果は十分にありますが、鼻唇溝など中顔面の改善については、実はあまり期待できません。
ラテラルスマセクトミーは、スタンダードSMAS弁法よりさらに顔面中央寄り、具体的には耳垂(耳たぶ)の少し前方と外眼角(目尻)を結ぶ線上でSMASを切開し、そこから前方にSMAS下を剥離した後、SMASを紡錘形に切除して切り口を縫合します。
縫い縮められるSMASの幅は、スタンダードSMAS弁法(耳前部での縫縮)ではせいぜい1〜1.5cm程度ですが、ラテラルスマセクトミーでは最大3cmほどが可能です。SMASを切除する方向が鼻唇溝に平行であることも手伝って、口元のたるみや鼻唇溝の改善が期待できます。
なお、顎下部のたるみが強い場合にはSMASの一部(下部)は切除せずに弁状に残し、これを回転しながら後方に引き上げ、耳後部に縫合固定します。

④ 脂肪吸引(図6a)
口角部や顎下部の脂肪吸引を併用することで、たるんだ組織の重量が軽くなり、SMASや皮膚の引き上げを行う際に可動性が良くなる効果があります。
ただし、口角部・頬部の脂肪吸引は、SMASの強度を低下させる恐れがあり、牽引力を十分にかけられなくなる場合もあるので、あくまでも控えめに行うことが大切です。
一方顎下部の脂肪吸引は、SMASの強度に影響がないので、できるだけ十分に行います。なお、脂肪吸引を行うために皮膚切開を追加する必要はなく、耳前部の切開からカニューレ(吸引管)を挿入して行います。

⑤ 側頭(こめかみ)リフト(図5b, c)
側頭リフトの詳細は前述のとおりで、これをラテラルスマセクトミーに組み合わせて行います。

側頭リフトの詳細はこちら

⑥ シルエットリフトの併用による「頬脂肪体」の引き上げ(図6b)
特殊な糸を用いたスレッドリフトは、わずかな皮膚切開のみで行う簡便なリフトアップ手術です。
本来は本格的なフェイスリフト手術までは希望しない方に適した方法ですが、それに用いる糸の特徴を生かし、フェイスリフト手術に併用することにより、特に中顔面のたるみ改善効果を期待します。
糸(スレッド)にはいくつか種類がありますが、ここで用いるシルエットリフトは、糸に取り付けられた複数の「コーン」が皮下脂肪にしっかり引っかかることで、比較的簡単にたるみを引き上げることができます。SMASリフトを行っても「頬脂肪体」の下垂を直接引き上げるのが難しいので、シルエットリフトをこの脂肪体に通して(通常片側2本ずつ)側頭筋膜に固定します。
トータルフェイスリフトでは側頭部の皮膚切開・皮下剥離がなされているので、新たな切開を加えることなく、極めて簡単にこの操作を追加することができます。

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⑦ 皮膚切除・縫合
耳周囲で余剰となった皮膚を切除します。従来のSMAS弁法では皮膚を後方に引っ張るイメージでしたが、ラテラルスマセクトミーでは皮膚がほぼ真上に引き上がります。たるみの多い方では、皮膚を無理に引っ張らなくても3cmほど上方に移動した状態でトリミングすることになります。

スタンダードSMAS弁法に比べて、皮下剥離の範囲を限定し、SMASを弁状にはせずに(SMAS下の剥離もほとんど行わない)少量切除して縫い縮める方法です。その結果余剰となった皮膚はある程度切除します。

手術の負担が比較的軽く、腫れや出血なども少ないので、術後回復が早いのが利点です。 比較的若く(30代40代)、たるみがそれ程ひどくはないが気になるという方におすすめです。このような適応からすると、最近流行となっているスレッドリフトとどちらを選択するか、悩ましいところです。

ミニリフトは負担が軽いとはいっても耳周囲の皮膚切開は行うので、それに抵抗を感じる方はスレッドリフトがよいでしょう。

ミニリフトはスレッドリフトに比べて、アゴから首のラインをシャープにする効果が高く、またそれが長く維持されます。

しかし頬脂肪体の引き上げ効果はむしろスレッドリフトの方が優れていると思われます。そこでこれらの方法を組み合わせて行うのも有効です。


① 皮膚切開
スタンダードSMAS弁法に近似した耳周囲の切開を行いますが、通常耳後部の切開線はやや短くなります。縮小手術とは言え、余剰皮膚を歪みなくきれいに処理するには、皮膚切開はある程度しっかり行う必要があるのです。

② 皮下剥離
 スタンダードSMAS弁法よりも狭く、耳前部、耳下部ともに3〜4 cm程度です。

③ SMAS切除・縫縮
 耳前部から耳下部にかけてSMASを幅1〜1.5 cm切除し、縫い縮めます。

④ 皮膚切除・縫合
他の術式と同様、余剰となった皮膚は切除し、縫合します。

≪手術時間の目安に関して≫
手術時間はあくまでも目安であり、患者様によって異なります。

≪麻酔に関して≫
局所麻酔 + 静脈麻酔 + マスク麻酔は、当クリニックで推奨している麻酔法で、経験豊富な麻酔科の専門医が行います。

痛みを取るのはあくまでも術者が行う局所麻酔ですが、手術範囲が広くなるにしたがって局所麻酔の注射に伴う痛みも増え、とても辛い思いを強いられることになります。そこでこの注射をする間、麻酔科医がマスク麻酔をかけて患者様により深い眠りに入って頂き、注射の痛みを全く感じないようにするのがこの方法の目的です。
ご希望によっては手術の最後まで完全な全身麻酔を行うこともできますが、その場合気管内挿管を行うために術後にのどの痛みを伴いやすいこと、術後全身回復にやや時間がかかることなどの理由により、通常は負担の少ない前述の方法をおすすめしています。